一経営者の四方山話

個人的に関心を持っているイシューについて考えたことを書いています。経営、経済、文化、学問など多岐に渡ります。

自分が持っている前提を疑う

1900年のニューヨーク市では、一日あたり1100トンの馬糞、220キロリットルの尿が路上に垂れ流されていた。市内では毎年何千頭もの馬が死亡し、市当局が腐って膨れあがった死骸を片づけなければならなかった。都会において馬が諸手を挙げて歓迎されていたわけ…

目標を明確に意識すること

1979年に、ハーバード大学のMBAの卒業生に将来の目標ついてインタビューしたところ、回答と構成比はこういう結果になった。 A 目標を紙に書いた。3% B 目標はあったが、紙には書かなかった。13% C 目標を持っていなかった。84% 10年後、追跡調査をしてみると…

現実的なリスク管理

何らかの不確実性やリスクはビジネスを進めていくうえで避けられないが、最近よく考えるのは、ネガティブな事象が発生する確率を想定するのは困難な場合が多く、発生確率で考えてもしかたがないということ。担当する人、事業内容、時、競合や顧客の環境、な…

選挙と民主主義

「たとえ5000万人が間違ったことを正しいと主張したところで、真実にはならない」(イギリスの作家サマセット・モーム)という言葉を引用して選挙で負けた人たちは言いたいだろうが、民主主義は選挙がすべてなので、負けは負け。負けた候補者が自分が正しいと…

伝記と時代背景

小学生の時にキューリー夫妻の伝記を読んだ時に、科学の発見や発明というのは命がけだな、と思った記憶がある。しかし大人になって、あらためてキューリー夫人とかの話しを読むと、当たり前だが子供の時に気付かなかったことに色々と気付かされる。 『世にも…

人工知能考:いかに悪人がAIを使って悪さをさせないかが大切。

先日、人工知能(AI)の勉強会に参加した。私の問題意識は簡単に書くと:・AIという技術そのものは善でも悪でもない。包丁や核兵器そのものが善でも悪でもないの同じ。使う人によって善にも悪にもなりうる。・つまりAIを使って悪事をなそうとする人々(ISと…

失敗力とリスク耐性

「自分がやったことは大体失敗してきた。しかし、ときにはびっくりするくらいうまく行くことがある。それを味わうと何回失敗しても怖くない」(大村智、2015年ノーベル医学・生理学受賞)という言葉を知ると、要するに失敗に対する感性を低くして、いわば「…

読書というメンタルトレーニング

米国の小学校でボランティアのゲストスピーカーとして「日本の小学校」とか「日本の政治制度」といったテーマで話したりしていたことがあるのだが、米国の学校ってやたらと読書をさせる。国語の授業って要するに読書の授業なんだよね。私が見た中学の国語の…

自分自身のバイアスを自覚することが大切

社会的にハンディキャップを背負っている人たち(深刻な病や身障者を抱える家庭、極度な貧困、シングルマザーなど)に対する社会保障の充実に最も反対する人たちって、そういうハンディキャップを経験しながらも懸命に努力して、いわば立派と言える人生を成…

マーケティング職の候補者を面接して思ったこと

私が事業のマーケティング戦略の概要を説明したら、「事前にずいぶんと論理的に考えているんですね。でも考えている仮説が正しいとは限らないので、そこまで考えずに実際の変化する状況や現実に直面した直感を元にしてアクションをしていったほうがいいんじ…

テレビ番組のネイティブ広告考

テレビ番組のネイティブ広告(native advertisement)の手法を今朝の通勤時に電車の中で考えた。ネイティブ広告とは、例えばtwitterやfacebookがやっているように、コンテンツ(文章や画像や動画など)と同じ文脈で表示される広告で、一見したところすぐに広…

文化の発達とボキャブラリー

その国の特定の文化が発達しているかどうかは語彙(vocaburary)の充実度合いで判定できると思う。英語だと豚と豚肉、牛と牛肉、など肉関係は独自の単語になっている。pig→pork、ox/cow→beefというように。日本語みたいにpig meat(豚肉)というような言い方で…

家族で登山騒動記、学んだ教訓

5月3日に小学生の娘2人を連れて、蓼科山(2531m)に登ってきた。登りの距離で言うと4kmくらいだが、登山口から頂上までの高低差で言うと800メートル程度あるので、一日で昇り降りするには結構きつい。今回の登山は、自分としては色々と反省が多い山登りだっ…

起業家とセールス能力

スタートアップ企業を経営していくのに、何が一番大切ですか(critically important)と外人から聞かれて、前にこんな風にこたえたことがあるらしい。答えた本人の私は忘れていたが、答えられた彼はそれを大切に今まで20年近くも意識してがんばってきたと先…

駅のデザイン

『駅をデザインする』(赤瀬達三著、筑摩書房、2015-02-10)という本を読んだ。各国の駅のデザイン(建物だけでなく、路線図とか道標とかも)を比較して論じたものだ。あらためて思ったが、日本の駅のデザインも悪いわけではないのだが、世界でも断トツにデ…

マーケティングの考え方の基本

部下と話していてマーケティングの考え方が理解されていないことを感じて、マーケティングの勉強会を定期的に提供している。だいたいこんな誤解を彼らは典型的に持っている。彼らは「"常識的"にはこうでしょう」と言うのだが。 1. ターゲットになる市場は大…

決められたルールとか型を破れない人の言い訳

若手社員と話していて思ったが、決められたルールとか型を破れない人の言い訳はだいたいこれらのどれかに分類される。 <能力の欠如系>1.「私には変える力(権限)がありません」 新岡:では力/権限ある人になるか、力/権限ある人を説得しなさい。そのくら…

「ハラル対応」の持つ意味合い

ANAの機内食のメニューに「ハラル対応」の食事があるのに感心した。イスラム教のハラルに対応しているということは、豚肉を使用した製品、ゼラチン、お酒、アルコールより抽出された香味成分、うろこやひれの無い海洋生物の肉は使用していない、ということだ…

登山用マップと戦略思想

山登りのルートを調べていて気づいた。山登りのルートのそれぞれには、昔から山登りしてきた人たちの「戦略思想」を感じさせる。ただ単に獣道を人が歩いて踏み固めらてできた道、というような単純なものではない。 通常山登りのルートの始まりは沢沿いで、し…

既存の枠組みを信じてはいけない

『0ベース思考』(スティーヴン・レヴィット、スティーヴン・ダブナー著 Think Like a Freak, by Steven D. Levitt and Stephen J. Dubner)を読むと、ホットドッグの早食い競争で優勝した小林尊(たける)さんの話が出てきて、おもしろい。私はこの本で彼…

「眠ったら死ぬぞ!」は嘘

仕事で登山関係の書籍を最近よく読んでいる。『登山のABC 山のエマージェンシー』(木元康晴著、山と渓谷社、2014-08-05)を読んでいたら、あるページで驚いた。 登山中に仲間の一人が滑落したら、上から「おーい、大丈夫かぁー!?」と声をかけてはならないん…

大人の方が子供よりも記憶力は優れている(はず!)

私は子供よりも大人の方が記憶能力は本来は優れている、という考えを持っている。 理由1.潜在意識と顕在意識幼少の頃に外国暮らしを始めると、大人よりも子供の方がローカル言語の上達において早い場合があるのは事実だ。しかし、これは言語能力が子供が高…

スタートダッシュできていることが人間は好き

数年前に作った自分のスライドを見ていたら、あらためて「へー」っと思ったのでシェア。『スイッチ』(“Switch: How to change things when change is hard” written by Chip Heath and Dan Heath)というベストセラーがあった。その中に使われているエピソ…

リソースの無駄遣い:国会と医療サービス

国会での質疑応答を見ていると、「こんな質問に答えるのに首相や大臣でなくてもいいよね。役人で十分」と思うことがたびたびある。いわばリソースの無駄遣いという感じ。同じように、医療サービスを受けていても、「風邪だろうが、珍しい病だろうが同じ医者…

頭脳ワークと肉体労働

脳は体重のたった2%にすぎないのに、ヒトは消費するエネルギー全体の20%を脳で使っているらしい。脳みそを必死に使いまくるとダイエットになるかもしれない。 でも、脳みそ使う仕事ばっかりやっていると、ストレスで「ドカ食い」(英語ではbinge onとい…

社会人になってから行く大学・大学院

米国の大学院に留学していた頃、その大学の1年生として母親と娘が同時に入学してくる、ということがキャンパスの新聞に出ていた。そして同じクラスに母と娘が出て受講している写真が出ていた。母親はインタビューで「はるか昔に高校を卒業した時は家が貧し…

日本組織で生意気に生きていけるのか?

「金メダルの感触は?」と聞かれて「は? ただの金属ですよ」と答えたりするくらい、中村修二氏って空気を読まないで発言する人なので、たぶん大部分の日本の組織ではうまくやっていけないタイプだとは思う。しかし、昔のソニーでは盛田昭夫氏は「私は生意気…

相手をどこまで信用できるか

若手の営業担当者と話していると、「今月末までに絶対この案件クローズできます!」と確信を持って話してきても、あんまり信用できないことが多い。実際に月末になってみると、相手方の担当者がその上司を説得できなかったりするからだ。相手をどこまで信用…

上司を鍛える

部下が上司に厳しい質問をするなどして、上司は部下によって鍛えられる。社長が弛んでいるのも、他の経営陣、つまり取締役や部長たちが社長を厳しく問い詰めたりすることが少ないからではないだろうか。(厳密には取締役は社長の部下ではなく、いわば共同経…

話題の映画 The Interview を無料ダウンロード可能にすべし

私がソニーの社長だったら、今回騒動になっている「The Interview」という話題の映画を無料でダウンロード視聴可能なようにばらまきつつ、映画館でも上映する、という解決策を取る。この利点は、 1. 北朝鮮クラッカー軍団が攻撃できない世界中の無数のホステ…