一経営者の四方山話

個人的に関心を持っているイシューについて考えたことを書いています。経営、経済、文化、学問など多岐に渡ります。

スタートダッシュできていることが人間は好き

数年前に作った自分のスライドを見ていたら、あらためて「へー」っと思ったのでシェア。
『スイッチ』(“Switch: How to change things when change is hard” written by Chip Heath and Dan Heath)というベストセラーがあった。その中に使われているエピソードが興味深い。

2007年の米国におけるホテルのメイドと運動習慣に関する研究を紹介している。
- 平均的なホテルのメイドは一日15室を清掃する。メイドは歩き、かがみ、押し、持ち上げ、運び、磨き、拭く→激しい運動そのもの!
- しかし、メイドの67%は定期的な運動はしていないと答えた。そこでメイドの一方のグループには、運動のメリットが書かれた文書を受け取り、日常の仕事がその恩恵を受けるのに十分な運動になっていると伝えられた。
- カロリーが燃焼するように筋肉を動かしさえすればよい、仕事が適切な運動量になっていて、シーツ交換が40KCal, 30分の掃除機かけ100KCalなど。
- もう一方のメイドのグループには、運動のメリットに関しては同じ情報を伝えたが、仕事が適切な運動になっているとは知らせなかった。
- カロリー消費量のデータもふせておいた。
- 4週間後、研究者が再びメイドを調べたところ、信じられないことが分かった。よい運動をしていると伝えられたメイドは平均0.8kgやせていた。もう一方は変化なし。

もう一つの話:洗車場のスタンプカード
- Aグループ:カードに8つのスタンプがたまると洗車が1回無料になる。
- Bグループ:洗車が1回無料になるためには、8個ではなく10個のスタンプを集める必要がある。
- ただし、そのカードにはすでに2個のスタンプが押されている。
- Aグループは19%しか8個集める人がいなかった。
- Bグループは34%がスタンプをためきった。しかもためきるまでの時間も短かった。

要するにこれらのエピソードから何がわかるかというと、「人間はスタートダッシュできているのが好き」ということだ。メイドの例で言うと、日々の仕事(部屋の掃除)をするだけで一日に必要な運動量のかなりの部分をすでにカバーしている、というスタートダッシュ、スタンプカードの場合は10個必要なうちの2個すでに完了している、というスタートダッシュ。
実際には、何も状況は変わっていないのに、スタートダッシュできている、という気分だけで人間の行動はこんなに変わる、という話。