一経営者の四方山話

個人的に関心を持っているイシューについて考えたことを書いています。経営、経済、文化、学問など多岐に渡ります。

顧客の意見 vs. 自分の考え

イノベーションのジレンマ』のクリステンセンの発見を、簡単にまとめると:
失敗した企業は、新しいアイディアを無視したわけではなく、それとは全く反対に、多くの場合、問題になっているテクノロジーを率先して開発してはいる。マーケットリーダーなのだから当然と言えば当然だ。でも市場に出さなかった。なぜか? 彼らの顧客が新製品に反対したか、無関心だったから。
「必要がない」「特徴が分からない」「我々が探しているものではない」「無意味な考えに研究開発資金を無駄にするな」というようなことを顧客は言う。
シュガート、マイクロポリス、プリアム、クアンタム、ウエスタンデジタルなどといったハードディスクメーカーは、残念ながら顧客の意に従うというマーケティングのベストプラクティスの正しさを信じたために、非常に大きな犠牲を払った。
つまり「顧客は常に正しいどころか、企業の死神にもなる」ということだ。

顧客が常に正しいわけではなくても、常に間違っているわけでもない。正しい時と間違っている時がある、ということなのだから、結局事業責任者なりマーケターなりの判断がそこに常に介入してくる。

クリステンセンの本を読んでから、部下から相談されて「お客さんがそう言っているんだったら、そうしたら?」という言葉は使わないようにしている。顧客からの意見も重要なインプットだが、自分の考えるロジックも重要なインプットだ。これらが一致する時は意思決定に迷いはないが、不一致の場合は色々と考えても埒が明かない場合、周りと話したりする。でも多くの人が「お客さんがそう言うんだったらそうしたらいいんじゃないの?」と大して考えもせずに言ってくる。そうした人は、私の場合「相談リスト」から外されていく。
意見が分かれるような論点をちゃんと考えるという作業は疲れる。だから安易に思考節約したがる人の気持ちは分かるが、私がその人に相談するという時点で「普通のではない」ということに気付いて、ちゃんと考えてほしいものだ。逆に人から相談されることもあるが、その場で答えず「明日までに考えておくから、明日私の考えを伝える」とする場合が多い。じっくりフレームワークとか考えて、全体感のある回答をしたいから。