一経営者の四方山話

個人的に関心を持っているイシューについて考えたことを書いています。経営、経済、文化、学問など多岐に渡ります。

死んだ細胞、生きた細胞、エネルギー効率と生き残り戦略

山で見る木の大部分は死んだ細胞の塊。幹の直径が1メートルを超えるような大木は、98パーセントが死んだ細胞だ。我々が家の柱に使ったりする木材(木部)は死んだ細胞の塊ということ。屋久島の縄文杉などにいたっては99.9%くらい死んだ細胞なのかもしれない。
木の死んだ細胞の部分を切り取って土に差しても根は発生しないわけで、若葉のついた細い枝先は生きた細胞なので、切り口から根が出てくる。
木の生き残り戦略としては、成長していくにつれて生きている細胞の比率を下げて(すなわち木部の割合を高めて)、エネルギー効率を高めていこうとする戦略。つまり葉でエネルギーを吸収したものを生きている細胞が消費するわけだから、生きている細胞が少なくなればなるほど効率が良い、というわけだ。

一方、人間は髪の毛や皮膚の一部が死んだ細胞だが、逆に98パーセント以上が生きた細胞。私たちが生きているということは、新しい活力ある細胞に日々置き換え続けているということ。これは木に比べてめっちゃエネルギー効率は悪い。
我々の体に葉っぱがたくさん生えて光合成をしながら生きていくにしても、エネルギーが足りなすぎる。脳みたいに体重の2%の重量しかなくてもエネルギー消費量は全体の18%も食っている。それでもエネルギー効率を犠牲にしてでも知的能力を強化する方向に進んだのが人類の生き残り戦略。おかげで母親の産道を通れるギリギリのサイズまで脳の容積を増やして生まれる結果、あまりのバランスの悪さゆえに生後1年も歩けないときたもんだ。短期的生き残り能力を犠牲にして長期的生き残り能力の増強を図っている、とも言える。

会社の経営陣に若手を入れるというのは「生きた細胞」の比率を高める、ということなのか? トヨタみたいな大企業は死んだ細胞の比率が高まるが(←かなり失礼な言い方だがw)、リソースの効率的な運用ができるようなオペレーションが確立しているので、エネルギー効率は高く、それはそれなりに生き残り戦略としてはありなのか?・・・などと考えさせられました。