一経営者の四方山話

個人的に関心を持っているイシューについて考えたことを書いています。経営、経済、文化、学問など多岐に渡ります。

ナメクジとカタツムリと企業戦略

ナメクジとカタツムリは似た生物(どちらも軟体動物門・腹足綱)だが、化石の解析から以下のことが分かっている。(足立則夫著『ナメクジの言い分』が詳しい。)
3億1千万年ほど前にカタツムリは現れて、2億年ほど前にナメクジが登場している。つまりナメクジが進化してカタツムリになった訳ではなく、カタツムリの殻を脱ぎ捨てたものがナメクジなのだ。殻は外敵から身を守ってくれるし、乾燥を防ぐのに役立つ。その意味で、ある日突然、殻を作れないカタツムリが突然変異で誕生した時には普通に考えれば生存に不利な変化だ。
ナメクジの生存にとって大きかったのは、殻を脱ぎすてることによって:
1. カタツムリが入り込めない隙間に入れることにより、従来取れなかった場所にある餌を取れるようになった。
2. 殻の主成分はカルシウム。したがって殻を捨てることによってカルシウムをたくさん摂る必要がなくなった。つまり少ない食料で生き残っていけるようになった。
 
企業戦略も同じようなことが言えると考えている。大手の競合企業が見捨てている小さなセグメントを取りに行くことによって十分中小企業なら生存できることもあるとか、殻を脱ぎすてるみたいに、何か会社にとって重要だと考えていたものを捨てて身軽になってみると、むしろうまく行くとか。インテルが80年代にメモリーチップの製造をやめたらうまく行ったとか。
 
ちなみにカタツムリの殻って、体から滲み出た石灰分が固まってできていて、無理に体から引き剥がそうとするとカタツムリは死んでしまう。殻が多少壊れたり傷ついても時間が経つとちゃんと修復されているところをみると、殻にも血が通っているのだ。私は小学生の時に残酷な男の子だったので、カタツムリの殻をはぐとナメクジになるのではないかと考えて、殻を無理やり引き剥がす実験を一人でやっていて何匹もカタツムリを結果的に殺してしまったことがある。他にもカタツムリに塩をかけてもナメクジ同様、浸透圧の関係で小さくなって死んでしまうことを実験によって小学生の時に確かめていたりする。