一経営者の四方山話

個人的に関心を持っているイシューについて考えたことを書いています。経営、経済、文化、学問など多岐に渡ります。

教訓を学ぶ勇気

御嶽山噴火 生還者の証言』(小川さゆり著、ヤマケイ新書、2016-10-05)の著者は、2014年9月の御嶽山の水蒸気爆発による噴火時に頂上近くにいたのにも関わらず、なんとか生き残った山岳ガイド。本の中に以下の記述があった。(p.150)

「たいてい言ってはいけないことが教訓の核心ではないかと私は思っている。その言ってはいけない教訓の核心は、災害で犠牲になった方の行動を非難しているように捉えられかねないからではないか。生き残った人の行動は、裏を返せば犠牲になった人があたかも劣っていたかのように捉えられるからではないか。教訓を伝えようとすれば、それは死者に鞭打つことと批判されるからではないか。」

この構造は、どんな災害や事件で生き残った人にも当てはまるものだ。生存することができた人が「自分が生き残ることができた原因」を当事者の視点から冷静に分析して正直にそのことを言うことができない。
例えば「津波が来ることを警告した市役所のアナウンスを聞いたら、ためらわずにすぐに山に逃げたことが良かった」とサバイバーが言ってしまえば、「アナウンスを聞いてすぐに逃げなかった人は馬鹿だと言うのか!」という非難を浴びてしまうことを恐れて、「単に私は運が良かっただけです」という当たり障りのないコメントしかできない。
災害等で亡くなった人には申し訳ないが、原因分析と人格とは切り離して教訓を学ぶ心的態度が必要だ。相手の心情を慮る優しさは必要だが、自然災害などからの教訓を学ぶ時には非情な厳しさが要る。
教訓を学ぶ勇気の無い者には、のちに同じ仕打ちを受ける可能性が高くなってしまう。