一経営者の四方山話

個人的に関心を持っているイシューについて考えたことを書いています。経営、経済、文化、学問など多岐に渡ります。

文化の発達とボキャブラリー

その国の特定の文化が発達しているかどうかは語彙(vocaburary)の充実度合いで判定できると思う。
英語だと豚と豚肉、牛と牛肉、など肉関係は独自の単語になっている。pig→pork、ox/cow→beefというように。日本語みたいにpig meat(豚肉)というような言い方ではない。肉食文化だと肉関係のボキャブラリーが発達するわけだ。
イヌイット(前はエスキモーと言われていたが)は、雪の状態を表す語彙が日本語の数十倍豊富らしいが、それは当然だろう。彼らの文化と密接に関係あるわけだから。

同じ物質で温度が違うだけなのに、水とお湯という全く別の語を用意しているのが、水の豊富な日本の文化を感じる。英語みたいに「熱い水 hot water」とは言わない。

先日知った英単語でdefenestrationという単語があって、「人を窓から投げ捨てる行為」を意味するが、こんなことを一語で言う利点を日本人には理解しがたいが、おそらく英語圏では一語で言うことが便利だと思えるほど、(少なくともかつては)よく行われた、ということなんだろうか。アングロサクソンの文化と密接な関係があるのだろうか。(笑)

家族で登山騒動記、学んだ教訓

5月3日に小学生の娘2人を連れて、蓼科山(2531m)に登ってきた。登りの距離で言うと4kmくらいだが、登山口から頂上までの高低差で言うと800メートル程度あるので、一日で昇り降りするには結構きつい。
今回の登山は、自分としては色々と反省が多い山登りだった。福島の原発事故なみに色々と誤算の連続であったと言えるかもしれない。

1. 八王子での渋滞で2時間ロス
朝5時前に自宅の千葉県浦安市を出たので、道路距離で230km(うち、高速道路が215km)くらいしか離れていないので、余裕で朝8時前に着くだろうと思っていたら、こんな早朝に八王子界隈が事故で大渋滞。そこの脱出に2時間かかり、その結果、ますます周りも通常のゴールデンウィークの渋滞が始まる時間帯になってしまい、最終的には登山口である女神茶屋口から登山をし始めたのが午前11時から、ということに。
考えてみれば、通常の登り方で登り3時間、同じルートで戻ったら2時間半。しかし休憩時間を考えると、現実的には往復7時間は考えないといけないだろう。となると、11時から登り始めたら、戻ってきたら、夜6時過ぎになる。真っ暗ではないものの、暗い山道を歩くのは危険だ。だから、出発する時点で出発を諦めて登山計画を今回は諦める、というのがおそらくは最も順当な意思決定というものだろう。
しかし、我々は諦めずに登り始めた。

2. 登りに4時間以上かかった
登山地図を見ると、登りに(休憩なしで)3時間かかることになっている。私の通常のペースは、登山地図で3時間というコースは、だいたい実際は2時間40分くらいで登る。しかし今回は子連れで、子供たちも休憩をとる頻度が多い。したがって合計4時間以上かかって頂上に到達した。
頂上に至る最後の30分くらいは、巨大な岩がゴロゴロしている、かなり急な登坂をする。こういう場所を登るのも怖いが、さらに下を見ながら下山する場合は相当な恐怖感がある。それが次の失敗につながった。

3. 帰りのコースを当初計画とは変更して別ルートで戻ることにした。
あまりに登りの最後の急坂がすごかったので、子供たちの希望もあり、別のルートで戻ることにした。頂上から天祥寺原へ降りて行き、滝ノ湯川沿いに戻ってくる登山道だ。しかし、これが大誤算。登りのルートはほとんど雪も残っておらず、持ってきたアイゼン(靴に付ける取り外しのできるスパイクみたいなもの)を使う機会はなかったが、山のこちら側は雪が完全に残っており、通常の数倍の時間がかかって下山することに。
アイゼンを使っても、スキー場で言ったら、上級コース(黒線のコース)みたいなところで、かなり急斜面の雪坂を降りて行くんだから、アイゼンがあっても相当すべって転ぶ。転ぶとなかなか止まらない。我々の前を60代のおじさんグループが歩いていたが、すべって頭を下に滑っていって、止まらずに数十メートル下へすべって肩を木にぶつけて止まった。幸い怪我はなかったようだったが。
さらに頂上から天祥寺原へ降りて行く川沿いの道が相当な「ガレ場(大きな岩がゴロゴロしている)」で、これに雪がかぶっているものだから、歩きにくいことおびただしい。異様に時間がかかり、疲労度も増す。結果、天祥寺原に着いた時点でヘッドライトを使わないとどうしようもないほど暗くなってしまった。この時点で午後6時半。しかも他に登山している人が誰もこの登山道にはいない。雪の上に足跡がついているので、何人かはこの数日、ここを歩いた形跡があることはあるのだが。この雪に熊の足跡があったらどんな思いがするのだろう、などと想像してしまった。

4. 登山道が事実上消えている。
さらに天祥寺原から滝ノ湯川沿いを歩く登山道のかなりの部分が、地図上はあっても目の前から消えてただの奥深い森林、それもかなり急斜面の道なき道になっているではないか。最初、60cmくらいの高さの笹が密に生えている平地を3人でかきわけて進んでいく。暗闇の中を大人1人と小学生の子供2人の3人が歩いて進んでいくのは、結構勇気がいる。
平地であるうちにはいいのだが、急斜面の森を斜めに道なき道をGPSナビソフトを便りに、かつ小さい子供と一緒に歩くのはとてつもなく時間がかかる。しかし、携帯電話は「圏外」表示のままなので、誰にも連絡をつけようがない。
とりあえず電話が入るところまで暗闇を進むことに決めた。地図を見ると、先へあと1kmくらい進むと電波が入りそうな気がしたので、夜8時くらいまで歩いて、結果的にそこでビバーク(緊急的な野営)することに決めた。

ビバークと言ったって、テントとかツエルトとか寝袋とかいったものは持っていない。持っているのは、ダウンジャケットと雨具だけだ。しかも高度は2000メートル以上ある。しかし、幸いなことにその割には結構暖かった。
幸い、携帯電話が一時的に圏外表示から3Gになってつながり、家にいる妻にビバークすることを連絡。我々は防寒具を着こんで、カロリーメイトを食べて空腹をしのぎ、翌朝空が明るくなってから行動することに決めた。そして3人でそこで適当な場所を見つけて、横になって眠ることにした。しかし、斜面だし、周りは木がいっぱい生えているし、我々3人が全身を伸ばして眠れるような場所はない。私と長女(小6)は全く眠れない。次女(小4)は、よほど疲れていたのかすぐに眠り始めた。

5. 雨が降ってくる。
悪いことは重なるもので、天気予報では晴れ時々曇りだったが、夜12時過ぎに雨がポツポツ降り出してきた。これでは雨具を着ているとはいえ、不快である以上に低体温症になって、最悪3人とも死にかねない。周りの土もドロドロになってくるし、全く眠るどころではない。それでも次女は眠っていたが。(笑)

6. 警察は明るくならないと助けにきてくれない。
そこで携帯電話が圏外から3Gでつながった瞬間をねらって、110番したら、長野県警が出て話したら、登山口がある行政区である茅野市警察署へ電話が転送され、また事情を説明した。結論として分かったのは、こういう状態の時には、警察も救助隊を派遣するのは明るくなってから、つまり朝5時以降でないと動かない、ということだ。二次被害を避ける目的なんだろうと思う。それくらい夜の登山道は危険だということなんだろう。
それだったら、我々3人が朝になってもう一度動き始めるというのがベストの選択肢、ということになる。

夜8時過ぎから翌朝5時まで私の場合眠らずに過ごすことになり、時間をもてあまして困った。しかも雨が降ってきて、雨宿りする場所もなく寒い。さすがに朝3-4時くらいは超寒く、がたがた震えながらすごす。もしこれに風が吹いていたら、完全に低体温症で3人の命は危なかったかもしれない、と思うと、最も幸運だったのは無風状態であったことだ、と言える。

そして朝5時前に我々は行動を再開し、1時間ほど道なき道をかきわけて進んでいくと、しっかりとした登山道を見つけ、それからさらに1時間歩いて車に帰ることができた。

今回の教訓としては、以下のことが言えると思う。
1. 登山計画は慎重に余裕をもった計画を立てるべし。
子連れで登山をする時点で時間を3割増しくらいになっても無事下山できるスケジュールをたてないと駄目。
2. 登山しない、という決断の難しさ。
八王子の渋滞による遅れで、その時点で登山を諦めるべきであった。しかし、登山しないとなると子供達もがっかりするし、親としてはその決断は非常に困難なものであった。しかし、プロとアマチュアの登山家の違いはそういうところにも現れるのだろうと思う。
3. 食料・水の大切さ
今回の場合、食料も水も必要十分に持って行ったため、荷物は重くなったものの、気分的にも体力的にも安心感があって、かつわりと普通の思考能力を維持することができた原因だと思う。空腹であの寒さだと低体温症に確実になっていたのではないだろうかと思われる。水も水筒ではなく、ハイドレーションシステムを使用していたので、2リットル/人の水も運ぶのが苦ではなかった。
4. ツエルト(簡易テント)は必須アイテム
登山関係の書籍にはツエルトは装備として必須アイテムには入れられていないことが多いが、2500メートル級以上の山を目指す場合は必須アイテムだと確信した。これによって数百グラムは重さも増すのだが、命には代えられない。
5. 警察は朝にならないと動かない。
朝にならないと動かないということは夜を何とか生き延びないといけない、ということでそれを覚悟した装備、体力を温存していないといけない。
6. 登山道は消えてなくなっている場合もある。
これは全く予想外だった。GPSアプリがなかったら、どうなっていただろうか、と恐ろしくなる。
7. 携帯電話のバッテリーは十分に予備を持って行くこと。
今回の場合、予備バッテリー付のiPhoneケースだったので、余裕をもった対応ができた。これが電池切れになったら、恐ろしい事態に。

子供達の感想は「死ぬかと思ったけど、終わってみると楽しかった」、「こんな経験をさせてくれる親なんかいないと思うよ」というポジティブな感想で良かった。また山登りをしたいらしいが、こんなにadventurous tripでなくていいよ、とも言っていた。そりゃそうだろうよ。私もこんなハラハラするようなことをやるつもりないよ。

起業家とセールス能力

スタートアップ企業を経営していくのに、何が一番大切ですか(critically important)と外人から聞かれて、前にこんな風にこたえたことがあるらしい。答えた本人の私は忘れていたが、答えられた彼はそれを大切に今まで20年近くも意識してがんばってきたと先日知った。
彼によれば、当時の私の答えはこうだったらしい。
ベンチャー企業が倒産するのは直接的にはキャッシュがなくなるからなんだけど、実際は、要するに説得力の無さだ。投資家に対して自分が信用に値する人物であることを説得できなかったり、良い商品・サービスであることを潜在顧客を説得できなかったり、という具合だ。説得に成功する前にキャッシュが無くなって会社倒産ということになるだけだ。」

今もその考えは変わらない。だから起業家は有能なセールスマンである必要がある。もしそんな資質がなかったら、そういう資質の人をパートナーに選んで起業する必要がある、ということだ。

駅のデザイン

『駅をデザインする』(赤瀬達三著、筑摩書房、2015-02-10)という本を読んだ。各国の駅のデザイン(建物だけでなく、路線図とか道標とかも)を比較して論じたものだ。あらためて思ったが、日本の駅のデザインも悪いわけではないのだが、世界でも断トツにデザインが悪いのが新宿駅
そもそも中央本線、中央線快速、中央・総武線(各駅停車)の違いの認識は東京に長年住んでいる人にとっても難しい。ましてや外国人観光客は大変だ。私ですら、京王線京王新線を先日間違ってしまった。また、急行や特急に乗る時は追加料金が必要な場合とそうでない場合があるが、その区別をどうやってするのかを外国人に聞かれて答えに窮したことがある。
「(新宿駅では)JR七路線は並列する八本のホームに分かれて発着していて、そのホームごとに個別の屋根が架けられている。このため全体的な状況が分からず、様子が見えるのはせいぜい隣のホームだけだ。これがもし、英国鉄道の駅やミュンヘン中央駅のように、全体を高い屋根で覆うことにしたら、ホーム相互の見通しはずっとよくなる。サインの工夫次第で、乗り換えも格段に分かりやすくなるはずだ。」(p.185)
ただし、これをやろうと思うと、今ではお金がかかりすぎてできることではない。要するに、駅のような、比較的大規模な公共空間を作る時には、最初のうちにデザインをよく考えておかないといけない、ということだ。後で大規模に変更するとなると、お金の問題と工事期間中利用者に迷惑をかけることになる、ということだ。

ニューヨークのGrand Central Stationのように、駅の天井が高いと気持ちがいい。フランスのTGVの駅とかも天井が高い。
天井が低いと圧迫感があって、みすぼらしい感じになる。そういうところを通る時は、私のように背が高いと頭をぶつけそうな気がして、ちょっとストレスフル。地下鉄の駅の天井が低くなるのは理解できるが、地上を走る鉄道の駅は天井を高くしてほしいもんだ。

名古屋駅のサイン(道案内の看板)の問題も書いてあって、東山線名古屋市営)に乗り換えるような人への案内が極端に小さく見にくい。「名古屋マリオットアソシアホテル」とか「ジェイアール名古屋タカシマヤ」の方向指示情報は大きくある。身内企業への案内は重視しているのね、と言われてもJRは反論できないだろう。

マーケティングの考え方の基本

部下と話していてマーケティングの考え方が理解されていないことを感じて、マーケティングの勉強会を定期的に提供している。だいたいこんな誤解を彼らは典型的に持っている。彼らは「"常識的"にはこうでしょう」と言うのだが。

1. ターゲットになる市場は大きければ大きいほど良い。
2. お金をたくさんかけて広告・宣伝をしないと売れない。
3. 機能的に競合商品よりも優れていないと売れない。

以下に、一つ一つ反論してみよう。

1. ターゲットになる市場は大きければ大きいほど良い。
「女性用下着というように市場を限定しないで、男女兼用下着というのを開発して売ると、ターゲット顧客の数が倍になって、事業として成功するよね」と言うのと同じ。そんな商品、誰も(たぶん)欲しがらない。
競合企業に対して戦っていくためには戦略の王道である「差別化」を行いたい。そのことにより、ターゲット層に「刺さる」ものを提案しないといけない。しかしそのターゲットを広げ、かつ刺さる価値提案(value proposition)を行うのは相当難しい。よく「刺さる」提案は限定された人たちへ向けた商品だ。
「今までにそんな切り方なかった!」というように、マスマーケットをもっと細分化して新たな切り口で攻めることもよく行われる。缶コーヒーでも「朝専用」を打ち出してみたり、アシックスのバスケットボールシューズ「ゲルバースト」は高校のバスケ部選手向けに開発されて、成功している。
アサヒフードアンドヘルスケアの栄養調整食品「1本満足バー」シリーズは、大塚製薬の「カロリーメイト」「SOYJOY」という手ごわいライバルがいる中、「夕方からの頑張りに!」をテーマに、男性が残業などの際に小腹を満たすという、他社が攻め切れていないニーズを開拓して成功した。すなわち朝食目的で買うセグメントを見事に捨てている。
マーケティング上の意思決定は「捨てる」勇気が必要だ。

2. お金をたくさんかけて広告・宣伝をしないと売れない。
もしこれが本当なら、世の中、巨大な広告予算を持ってテレビコマーシャルをバンバン出せる大手企業しか生き残れないことになる。実際には、ターゲット顧客にメッセージが届きさえすればいいのだから、ターゲットが床屋のように地域限定である場合もあれば、プラモデルのように、ある趣味を持つ人限定だったりする。したがって、その限定したターゲットに効率よくメッセージを届けさえすればいいわけだ。市場を限定すればするほど、メッセージを伝える相手が具体的かつ「刺さる」メッセージを効率よく伝えることができるのだ。そして市場を限定すればするほど競合企業の数が少なくなっていく。その結果、メッセージを伝えやすいし、説得力を持ってくる。

3. 機能的に競合商品よりも優れていないと売れない。
Louis Vuittonのハンドバッグは機能的にみると、ただの塩化ビニールでできた袋であって、革製よりも機能面では劣る、と言われてもしょうがない。
マーケティングで大切なのはターゲット顧客の「頭の中の戦い」を意識することだ。客観的な違いではなく、ターゲット顧客の頭の中で「違い」を感じさせればいい。私にとってはCoachのハンドバッグもGucciのハンドバッグも機能面での違いを全く感じない。しかしほとんどの女性の「頭の中」では違いが明瞭に存在している。
小林製薬の「熱さまシート」だって、機能的には要するに保冷剤だ。最初出た時は発熱時に子供のおでこを冷やす用途で発売した。この市場では、機能面ではるかに優れた、中に氷や水を入れて使用するゴム製の氷枕(水枕)というのがあった。「熱さまシート」は使い捨てだが、氷枕は何度でも利用可能だ。しかも小林製薬は大人というセグメントは捨てて、子供の発熱用に限定してきた。単純に考えると、ターゲット市場が大幅に小さくなっている。しかし、
売上=商品単価×購入個数×購入回数/年
という方程式で考えると、氷枕は1回しか買わないが、「熱さまシート」は何回も買う消耗品にしてしまい、ターゲット市場を結果的に拡大することに成功している。

要するに、マーケティングというのは、顧客の頭の中の戦いをいかに制するか、ということだ。知恵と工夫でいかようにもなる、ということだ。

決められたルールとか型を破れない人の言い訳

若手社員と話していて思ったが、決められたルールとか型を破れない人の言い訳はだいたいこれらのどれかに分類される。

<能力の欠如系>
1.「私には変える力(権限)がありません」
 新岡:では力/権限ある人になるか、力/権限ある人を説得しなさい。そのくらいはできるだろう。
2.「いままで経験がありません」
 新岡:あんたの年齢でなんでも経験ある人はいないだろう? その歳で新たな経験を求めなかったら、どうやって成長できると思っているの?
3.「私にはできません」
 新岡:やろうともしたことないくせに、できないと断言するな。
4.「私はそんな特別な人ではありません」
 新岡:100メートルを10秒以内で走ってみろ、というような特別な才能と特別な努力が要るようなことを要求しているわけではない。普通の人が普通に努力すればできる程度だろうが。

<周りの目を気にした自己抑制系>
5.「目立ちたくありません」
 新岡:目立たずにやれる方法もあるよ。そもそも正しいことをやって目立って何が悪いというのだ?
6.「言われたとおりにやりました」
 新岡:言われたことだけしかやれないんだったらロボットと同じ。言われた意図を自分で頭を使って考えろ。

<居直り系>
7.「やろうと思えばいつでもできる」
 新岡:いつになったらやろうと思うわけ? あなたがやろうと思ってくれるのを周り/市場は待ってくれないんだよ。


要するに向上心とか成長欲とかが足りないんだよなぁ。でも世の中、そういう人の方が圧倒的多数なのかもしれない。そういう人を上手にマネージできて、やる気にさせていくのが優れたマネジャーなんだろうな。

「ハラル対応」の持つ意味合い

ANA機内食のメニューに「ハラル対応」の食事があるのに感心した。イスラム教のハラルに対応しているということは、豚肉を使用した製品、ゼラチン、お酒、アルコールより抽出された香味成分、うろこやひれの無い海洋生物の肉は使用していない、ということだ。
当然ANAが自分で作っているわけではなく、サプライヤーが作っているわけで、さらにそのサプライヤーは色々なところから食材を仕入れているわけなので、それらのサプライヤーの階層を上流にさかのぼって調べてハラル対応かどうかを交渉・検査しているわけだから、大変な手間だ。
でも考えてみると、昨今話題になるtraceability(食品などの生産履歴管理)がしっかりとできているということで、各種宗教対策された食品だけでなく、アレルギー対策食品だのも安心して購入できる、ということだ。
ということは、ANA機内食を下している会社の食品は、食を非常に気にせざるをえない家庭では安心して購入できるに違いない。
今後、日本が国際観光立国を目指すのならば宗教食に対応していくしかない。そしてこれに対応するということは、日本の食の流通網も相当鍛えられるなぁ、と思った。

Wikipediaを見ると、ハラル対応は相当大変だ。
1. 餌:その家畜が食べた餌にハラルに違反するものが入っていてはならない。
2. 屠畜:必ずムスリムが殺したもので無ければならず、鋭利なナイフで「アッラーの御名によって。アッラーは最も偉大なり」と唱えながら喉のあたりを横に切断しなければならない。(新岡注:こりゃ大変だ...。屠畜する人にイスラム教信者なんか相当少ないだろうに...。)
3. 解体処理:牛の頭をキブラの方向に向けて完全に血液が抜けて死んでから行う。
4. 輸送保管:保管場所や輸送する乗り物に豚が一緒になってはいけない。冷蔵庫からトラックまで全て別にする必要がある。

本当にこういうのに対応するのは大変。「ダイバーシティ」に対応するというのは、こういう手間をかけてやっていくということなのだろうな。


http://www.ana.co.jp/int/inflight/spmeal/